ぼくはゆきだるま

かとうゆうこ

ぼくはゆきだるま

 ぼくは、ゆきだるま。
 ゆきがどっさりつもったあさ、うまれた。
 めはまつぼっくり、くちはあかいおはし、はなはしゃもじ、りょううではほうき。
「うーん!なかなかよくできたぞ」
 ぼくをつくったのは、あきらさん。
 じいっとぼくをみつめて、おおきくうなづくと、きいろい、けいとのぼうしをぬいでぼくのあたまにのせた。
「ゆきだるまくん、るすばんたのむよ」
 そういってでかけていった。
 それで、ぼくはるすはんのゆきだるまになった。
「まあ、すてきなゆきだるまねえ」
 あかいコートのおねえさんが、たちどまって、ぼくのかおをのぞきこんだ。
「エッ すてきだなんてはずかしいや」
「おおきなゆきだるまだな」
 がっこうにいくとちゅうのおとこのこが、ぼくのほつぺにさわった。
「ウフッ。くすぐったいや」
 とおるひとはみんなぼくをみてたちどまる ぼくは、なんだかてうれしくて、ゆきだるまにうまれてよかったとおもった。
 しばらくすると、おとこのひとが、やってきた。
「あれ?あきらさんいないんだな。かさ、かえしにきたんだけど」
 それから、ぼくをみて
「やあ、ちょうどいいるすばんがいるね。このかさもっててくれる?あきらさんにつたえとくからさ」
そういって、ぼくのてにかさをひっかけた。
 それで、ぼくはほんとうに、るすばんのゆきだるまになった。
 おひさまが、そらのだいぶのたかいところにのぼって、すこしだけあたたかくなってきた。
「ぼうしがゆがんできちゃったわね」
 かいものかごをじめんにおいて、おばさんがぼうしをまっすぐになおしてくれた。
 しばらくしてうでがしたにさがってきた。「かさがおちそうだよ」
 ゆうびんやさんがぼくの、かさをもったうでを、ぐっとからだにさしこんでくれた。
「ありがとう。だいじょうぶです。ぼくはるすばんのゆきだるまですから」
 おひるをすぎると、ずいぶんあたたかくなってきた。
 みちのゆきは、もうきえてしまった。
 ぼくもすこしづつとけてきて、めのまわりからポタポタみずがおちはじめた。
「なかないで」
 ようちえんからかえるおんなのこがぼくのめを、ハンカチでふいてくれた。
「だいじょうぶです。ぼくはるすばんのゆきだるまですから」
 それから、とおるひとはみんな、ぼくをみるとしんぱいそうなかおになってきた。
 ほんとは、ぼくもしんぱいなんだ。
「あきらさん、はやくかえってこないかな」
 とうとう、うでがだらんとさがって、かさがじめんにおちてしまった。
「たいへんだ!かさはちゃんとあきらさんにわたさなきゃ。ぼくは、るすばんのゆきだるまなんだから」
 そのとき、がっこうがえりのしょうがくせいがとおりかかった。あさ、ぼくのほっぺをさわったあのおとこのこだ
「このあたりで、まだとけてないゆきだるまはきみだけだよ。すごいなあ」
 そういって、かさをおなかのよこにたてかけてくれた。
「よかった!」
 けれど、ぼくも、だんだんとけて、せがひくくなってきた
からだもかおもかたむいてそらしかみえなくなってきた
「ああ。あきらさん、はやくかえってきて!」
 おひさまは、にしのそらにしずみかけて、とおるひとはみんないそぎあしでうちにかえっていく。
 もう、だれもぼくをみなくなった。
 とうとうぼくは、かさとおなじたかさのただのゆきのかたまりになった。
「ぼくはもうだめになりそうだ」
 そうおもったとき、
「おそくなってごめん。るすばんごくろうさん」
 おおきなこえがして、あきらさんがかえってきた!
「かさもっててくれてありがとう」
 あきらさんはぼくのあたまやからだをもとのかたちにもどそうとしてくれた。
 でも、もうゆきがすくなくてうまくいかない。
「きみがとけていなくなったらさみしいな」 あきらさんは、ぼくのまえにしゃがんで、つぶやいた。
 でもすぐに
「そうだ!いいことおもいついた」
 そういって、うちからおおきなはこをもってきた。
「ここが、きみのベッドだよ」
 はこのなかに、ぼくのめと、くちと、はなと、てと、ぜんぶをきれいにならべていれてくれた。
 さいごに、きいろのぼうしをてっぺんにのせていった。
「こんどゆきがふったらまたあおうね。それまでゆっくりおやすみ」 
 ぼくはほっとした。
 なるべくはやく、また、ゆきがふりますように。

​おわり