はらまきをしたおおかみ

大きな森の隣に小さな村がありました。

 村のみんなが楽しみにしているお月見まであと少しと言う夜のことです。

「グォォー」という低くて太い音に驚いて、村の人たちは飛び起きました。

 その音は森の奥深くから響いてきて、低くなったり高くなったしながら、朝になっても止みません。

「一体何の音なんだ!」

 村の人たちは思いましたが、そのうち止むだろうと気にしないことにしました。

 でも、次の朝も音は止みません。

「聞こえなければ良いんだ」

 そう思ってみんな耳栓をしました。

 三日目の朝、

「子供達が怖がって家から一歩も出ません」 お母さんたちが困って村長さんのところにやって来ました。

「そりゃあいかんな。外に出ないとお月見もできないぞ。こういう時は、まず調査から始めなきゃいかん」

 そこで、誰かが森の調査に行くことになりました。でも、なんだか怖そうで誰も行きたくありません。

 村長さんは言いました。

「じゃあ、じゃんけんで決めるしかないな。いちばん勝った人に行ってもらうことにしよう」 森の入り口の広場に集まって、みんなため息をつきながらじゃんけんをしました。

最後に勝ったのはとらたろうさんでした。

「トラは何より強い動物だ。名前にとらが入っているからきっと大丈夫だよ」

 みんなはそう言ってとらたろうさんをはげましました。

 しかたなく、とらたろうさんはリュックを背負って森に入って行きました。

 音がする方に向かって長い間歩いた末、大きな樹の下のしげみに、何かが動くのを見つけました。 

 とらたろうさんはじっと目を凝らしてみました。

 はいいろのおおかみです。

 グルグル体をよじっては恐ろしい声で唸っています。

「見つけたぞ。おおかみの声だったのかあ」 そう思ったとたん、とらたろうさんはおおかみと目があってしまいました。

「しまった!」

 とらたろうさんは慌てて目をぎゅっとつむりました。すると、

「しっぽがめちゃくちにゃ絡まっちまったんだ」と、低い声がしました。

 目を開けるとおおかみがじっとこちらを見ています。